コーネリアスは、立って歩くワニです。たまごの中から、立って歩いて出てきたのです!
草むらのずっと向こうまでの景色、上から眺める魚の姿。彼には他のワニたちには見えないものが見えます。だけど、嬉しそうに伝えるコーネリアスに対して、他のワニたちは言います。
「へえ、それで?」
怒って出て行くことにしたコーネリアスが出会ったのは、歩くだけでなく、逆立ちやしっぽでぶら下がることまで出来るサル。驚いたコーネリアスは、サルにその方法を教えてほしいと頼むのです。そして……。
颯爽と立って歩くコーネリアス。その堂々とした姿は、人間の私たちが見てもまぶしいくらい。生まれながらに出来てしまうのですから、大したものです。そんな彼が、自分たちに見えないものが見えると言う。私でも素直に関心を持てなかったかもしれません。
だけど、コーネリアスが本当に特別なのは、その後。最初から出来ることがあったからこそ、さらにその才能を伸ばし、習得し、それをみんなに生き生きと見せてくれます。この時、みんなの心の中に、何かが生まれるのです。
どんな生き方が素晴らしくて、どんな方法が最適か。私たちの中には、正解なんてありません。でも「何かが変わる予感」というのは、いつだって心を躍らせてくれるものですよね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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