フェリシモ出版の「おはなしのたからばこ」シリーズ23巻は、今江祥智さんの処女作『トトンぎつね』を絵本化。
細い三日月が昇る、静まり返った真夜中。
「トトン トトン トトン」と、誰かがおもての戸をたたいています。
そして、「ま、さ、こ、ちゃん」と正子の名前を呼びました。
正子は思わず「はあい」と返事してしまったけれど、こんな夜中に一体誰……?
戸を開けるとそこには、きつねの親子が静かにたたずんでいました―――
「ぼんぼん」「優しさごっこ」など数多くの名作を生み、2015年に逝去された児童文学作家・今江祥智さんが50年以上前に初めて書いた童話が、素敵な絵本になりました。
黒を基調とした植田真さんの絵は、真夜中の静まり返った空気感までもが見事に表現されています。
さらに、全体を通してはっと息を飲むページ構成に仕上がっていて、ページをめくる度にドキッとしたり、ハラハラしたり、胸がぽっと温かくなったり。
なんとなく眠れない夜に、そっと開いてほしい一冊です。
(洪愛舜 編集者・ライター)
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ピンクのカーテンの奥に広がる夜空、星空が映る布団、清潔な白いベッド、ウサギのぬいぐるみ……。ひとつひとつが、頁をめくるたびに静けさと神秘さを漂わせて物語が始まります。
「トトントトン」というキツネが戸を叩く音が澄んだ空気の中に響き渡ってくるよう。
昼間、正子ちゃんに助けてもらったキツネがそのお礼を伝えたくて夜中にやってくる、
あたたかで静宿謐でユーモラスなお話。ラストシーン、草原の向こうから「ありがとうって言えたよ」
「よかったわねぇ」というキツネの親子の声が聞こえてくるようです。今江祥智さんが初めて書いたという
この童話は50年読まれつづけ、今回植田真さんのモダンな絵で装いも新たに素敵に誕生しました。
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