大きくなったら、自分たちの親のようになりたいと、自慢しながら嬉しそうに話す、森の動物たち。みんなの話をニコニコしながら聞いていた子ぎつねたちでしたが、みんなにたずねられると、自分たちは何も自慢できないことに気づき、何も言うことができません。でも、家に帰って、お母さんにたずねると、「きつねだからこそ、幸せなことがある。お父さんと出会えて、こんなにかわいいあなたたちにも出会えたんですもの」。と、子ぎつねたちを、ぎゅっと抱きしめてくれました…。
あたたかなぬくもりに包まれた、「家族愛」を描いた絵本です。
ポイント
・家族の愛が心にひびきます
・自分が自分であることの素晴らしさを実感できます
・やさしく、あたたかい絵に癒されます
<おうちの方へ>
「よみがえる家族愛」 教育評論家・尾木直樹
最近、「家族」について考えさせられる事件が相次いでいます。
幼い子どもたちが食事を与えられず餓死したり、しつけと称した身体的・精神的虐待を受けて命を落とす事例が急増。2010年の1月〜6月だけでも18人もの尊い命が奪われました。また、児童相談所が受け付けた虐待相談件数も2009年度は44,000件を超え、1990年度の1,101件の40倍を超えています。
一方では、100歳以上のお年寄りが全国で200人以上も所在不明となっていることがわかり、大きな衝撃を与えています。これでは、どうして子どもたちに、家族の大切さを教えることができるでしょうか。私たちの家族愛はどこに姿を隠してしまったのでしょう。社会的弱者である子どもとお年寄りを大切にできない国に、未来はありません。
『ぼくがおおきくなったら』は、こんな「家族崩壊」社会・日本にとって、癒しと希望の一冊といえます。確かに、しかさんの立派な角も、やぎさんの豊かなお乳も、くまさんの大きさも、さるさんの木登りも、素敵で誇らしい力、宝物に違いありません。しかし、外見上の「立派さ」や「能力」はなくても、お父さんとお母さんがいて、その愛の結晶としての子どもたちがいるきつねさん一家。だからこそ、森で、いや世界一の幸せを感じて、子ぎつねたちをギュッと抱きしめるお母さんぎつね。
「とうさんも おなじさ!」
さらに、そのお母さんを大きく抱きしめるお父さんぎつね。
「そうか、わかった! ぼくたちは おおきくなったら、せかいで いちばん しあわせになるんだ!」
日本のすべての子どもたちが、この子ぎつねさんたちと同じ心境になれる日が来ることを願わずにはおれません。今、急速に崩壊しつつある「家族愛」を見事によみがえらせ、温かい気持ちにさせてくれる一冊です。
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