たまごの殻から足が二本、顔もしっかり出ていておまけに……自分で歩いている!? 驚きの格好をしているこの子の名前は「たまごにいちゃん」。本当はもう、たまごから出ていないといけないのだけれど。
おかあさんからは「はやく大きくなるといいわね」と言われ、弟はすでにお兄ちゃんより大きくなっているのだけれど。
たまごにいちゃんは、このままがいいと思っているのです。だってだって、いつでもおかあさんにあたためてもらえるし、みんなから怒られないし、水にだって浮かんでいられる!だけど、そんな時。ハプニングが起きて大切なたまごの殻にひびが入ってしまうのです。
「このままじゃ 、ぼく本当のおにいちゃんになっちゃう」
不安でいっぱいのたまごにいちゃんだったのですが……。
あきやまただしさんの大人気「たまごにいちゃん」シリーズの記念すべき1冊目。たまごの殻をかぶったまま大きくなっていく突拍子もない設定は、読むたびに可笑しくて笑ってしまうのですが、全編を通して描いているのは、子どもたちの成長していく姿。早くお兄ちゃんになりたいって思っている子もいれば、いつまでだって赤ちゃんでいたいっていう子がいる。当然ですよね。殻を割るタイミングは、みんな同じじゃなくたっていいのです。
きっかけはハプニングだったけれど、たまごにいちゃんだって殻から出て来た時にはほらね。おかあさんが言ってくれた通り。
「大きくなったわね、とってもすてきよ」
成長するって、悪くないでしょ?
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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