きんにくモリモリのぼくのパパ。だけどパパがどんな仕事をしているか知らない。
そっとパパの車にのりこんで後をついていくと、大きな体育館に入っていった。
そこでぼくが見たのは、かっこいい男の人ドラゴン・ジョージとマスクをかぶったゴキブリマスクとのにらみあい。
カーン!
ゴングが鳴った!ぼくはドラゴンを応援することに決めた。だって、どう見たってゴキブリマスクは悪者だから。だけどその時…。
怖い姿で、ずるいことばかりをして。正義の味方にやっつけられている悪役レスラーが、まさか!?
一生懸命仕事しているパパの仕事が、「正義の味方のヒーロー」だとは限らない。
パパだって、ぼくに本当の姿を見せたくなかったのかもしれない。
色々な気持ちが一度にやってきて、混乱するぼくだけど、パパはぼくに言う。
「パパは がんばって わるいことを しているんだ。わかるか?」
小さい頃、ふとテレビで見た事のある悪役レスラー。それはただただ恐ろしくて、憎たらしくて。
大人になってから改めてプロレスを見ると、そのひたむきな悪役の姿の素顔が気になったりして。
そんな大人ごころも、まるごとひっくるめて楽しませてくれるこの絵本。かっこいいのです!!
自分の仕事に誇りを持って、息子に対して堂々としてみせるパパも。
切ない思いをしながらも、パパの仕事への誇りを受け入れる息子も。
そして、透明感のある美しい色彩で、迫力のプロレスシーンやぼくの心情を印象的に描き出している絵が、この作品を魅力ある1冊に仕上げています。
パパと息子、男同士の約束にはちょっとしびれちゃいますよね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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