おばあちゃんの家で、わたしが見つけたのは、女の子の絵。おばあちゃんの子どもの頃の絵ということで、おばあちゃんはわたしに、その絵を描いてくれた人のことを語ってくれるのです。
夏休みの頃、学校に行けなくて引きこもっていた「あたし」(おばあちゃん)は、親類の絵描きさんからの誘いで、海のそばのアトリエで一週間を過ごすのです。絵描きさんとの生活は、子どもを”子ども扱いしない”もの。大人っぽい食事、夜の読書、朝の体操、海辺の散歩などなど。伸び伸びとしていて、何だか心が解放されていくようです。もちろん、絵描きさんの仕事を見ていると、絵を描きたくなり、絵描き体験もさせてもらって。
おばあちゃんからわたしへ、素敵な記憶が受け継がれる瞬間。
それは、読者へのメッセージにもなっています。
あなたはこれから大事な人に出会い、ずっと覚えていたい日が、きっとあなたをまってるわとー
この作品は、作者の堀川理万子さんの実体験がベースになっています。絵を習っていた画家の先生の影響が、『くだものと木の実いっぱい絵本』や『びっくりまつぼっくり』などの丁寧な絵の源泉となっているようですね。
みなさんも、さわやかな海風のような物語を深呼吸してみませんか?
(中村康子 子どもの本コーディネーター)
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